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- ZW3D CAD/CAM ユーザー事例 : 点群ならびにSTLからの金型作成
点群ならびにSTLからの金型作成
(有)拓海モールド
当社が販売する“ZW3D CAD/CAM”(以下“ZW3D”と表記)は 自在な曲面作成,金型モデリング,図面作成,アセンブリ,3 軸~同時5 軸加工に対応したCAM機能などを有する3D-CAD/CAMである。手頃なシステム価格でありながら,製品開発,設備設計,金型製造など,デザイン工程から加工工程までの一連の作業に対応できる。
データ容量,演算量,必要メモリなどが少なく,低いハードウェア負荷で優れたモデリング精度を実現する「ZW SOFT」社独自のモデリングカーネルによる自在な曲面モデリングを最大の特長とし,「一括処理できるヒーリング機能」,「多数曲面に正接する自由曲面」,「点群からのサーフェス作成」といった機能にユーザの評価が高い。
また,サーフェスで囲まれた空間を自動的にソリッド要素として認識,ソリッド要素として自動認識されると、追加/差分/交差(積)などのブーリアン処理に活用できるハイブリッドモデリングも高い評価を獲得している。(図1~4参照)
さらに、多彩な自由曲面の機能をサポートする一方,一般的なソリッドモデラと同様にスケッチ機能で形状の外形線や断面線を描き,スケッチの押し出しや回転,ブーリアン演算といった操作で目的形状をモデリングするソリッドモデラ的な使い方もできる。
また、他のCADでは手間のかかる徐変フィレットや複数のサーフェスを使ったトリミング処理などがZW3Dでは少ない操作で適切にモデリングできるため,受け取った形状データの不具合箇所の処理,抜き勾配やフィレット,隅部のボカシ処理など,既存のCAD/CAM環境に追加して、業務の効率化に役立てるユーザも多い。
そのようなユーザの中から,①STLデータの編集性,②金型モデリング,③CAM機能の3点を評価する(有)拓海モールドを訪ね,点群データを活用した試作の流れを紹介する。
STLから形状作成,RPとNC加工で金型製作
拓海モールドは,3次元測定器や3Dスキャナから出力された点群や、STLデータを取り込んで形状作成→金型製作を得意とする金型メーカである。(図5~7参照)
ZW3Dのほか,デザイン系のソフトウェアなども組み合わせつつ,“面処理職人”,“金型職人”のアイデアを最適に取り入れて“他メーカにできない試作プロセス”を提供する。
また、アイデアスケッチやモックアップの段階から量産までつなげる仕事を得意とするため,自動車・家電・雑貨など,さまざまな業界の試作品を手掛けている。
(1)ZW3D導入の背景
同社では,モックアップを三次元測定した点群データを処理する機能を中心に、さまざまなソフトウェアを調査・テストする中から,この分野の機能に優れたZW3Dに着目,2005年から活用している。
また,同社は取引先からのSTLデータを受け取ってスタートする仕事も多い。IGESやPARASOLIDの受け取りならば多くのCADが対応するが,点群やSTLデータからの曲面作成については,「他のCADでは機能がなく、読み込みできなかったり,読み込めてもポリゴンとして1要素になってしまって、形状修正や曲面作成ができないCADがほとんど」(同社代表取締役社長 會澤利勝氏)だったという。
同社でもZW3Dの導入以前は,点群を少しずつ読み込んで,曲面の様子を少しずつ調整しながら,形状全体を構築していくという「とにかく地味で時間のかかる作業」(會澤社長))を行っていた。また,ZW3DにはCAM機能があり,途中でデータ変換せずにNCデータまで直行できることも納期短縮の点から歓迎できた。保守サポートなど,トータルのCAD費用の抑制にも好適と判断した。
(2)STLや点群データからの曲面作成
ZW3Dは,点群,カーブ,サーフェスのいずれの要素からも、目的形状を自在にモデリングできる。読み込んだ点群データは「ブロック」エンティティ(=図形要素)として認識され,任意に配置されたポイントを通過点、または制御点とするNURBS補間によって,高精度なサーフェスを創成する。500万ポイントというような点群データでも、大規模な点群編集も快適に作業できる。
①点群データの読み込み・サーフェス化
ZW3Dへの点群の入力方法は大きく分けて2通りある。1つはCSV形式のファイルで用意された点群データを読み込む方法。もう1つはSTLデータを読み込む方法である。
後者の場合,STLの頂点が点データに変換され、点群として認識される。STLデータはASCII形式,バイナリ形式の両方に対応できる。点群からのサーフェス作成はワンコマンドである。必要に応じて領域を分割して,その範囲の点群だけを使ったサーフェス化もできる
図5 レーザー焼結RPシステム「EOSINT M250Xtended」 |
図6-a 拓海モールド 金型製作例(1) |
図6-b 拓海モールド 金型製作例(2) |
図7 社内の射出成形機 |
② ブレンド処理・サーフェスの修正
点群からサーフェスが作成されたら,サーフェス同士のつながりを調整する。ZW3Dでは,サーフェスの間に接線性を定義する補助線がなくても、連続性のある曲面が作成できるほか,多辺に囲まれた領域に周囲のフェースとの連続性を総合的に考慮したブレンド曲面の作成もワンコマンドで処理できる。
作成したサーフェスの滑らかさや製品形状としての妥当性は,シェーディング,ゼブラマッピング,曲率表示など、各種のレンダリング機能によって画面上で確認できる。形状に“納得のいかない部分”が見つかった場合は,サーフェスの変形機能で修正する場合と,元の点群データの並び方に立ち返って,周囲のサーフェスを参考にしながら微調整を加えたりする。
サーフェスを任意方向に引っ張って自在に形状編集できる「デフォルメ」機能のほか,他の図形要素の輪郭までサーフェスを延長する「フェース自動延長」,フェースのトリミングなどで発生する微細な隙間を埋める「フェース修復」,交差しない複数フェースの仮想延長による一括トリミングなどのサーフェス機能を活用する。
③ 金型モデリング支援(図8~11参照)
ZW3Dには金型モデリングの支援機能として、「モールドデザイン」と「板金」を用意しており、同社でもこの機能を活用している。
「モールドデザイン」には,1ステップで簡単にコア/キャビティ両方を作成できる機能のほか,冷却ユニット用に複数の穴を定義して自動で製品や金型パーツとの干渉を考慮した水穴経路と穴あけのための正確な中心座標を計算する「シングルステップユーティリティ」や,既存のモールドを流用して金型設計に有効な変更個所・非変更個所の確認と図形の追加・削除が可能な「部品比較」コマンドがある。
パーティング面のトリム/分離/延長といった編集操作を高い自由度で行えるモールドデザインの機能を活用して,シルエット,平面交差,エッジなどからパーティング面を作成する。
この機能を活用すると,シルエット,平面交差,エッジなどからパーティング面を自動作成できる。形状が複雑でパーティング面を平面にできない場合には,同機能を活用してサーフェス同士の交線をパーティングラインに利用したり,輪郭ラインの傾きやねじれに沿ったパーティング面を設定したりできる。
図8 キャビ・コアモデリング例 |
図9 パーティング面の作成の様子 |
図10 シングルステップユーティリティによる水穴の自動作成 |
図11 スケッチ機能・ドローイング機能 |
CAM機能
ZW3Dは完全統合型CAD/CAMシステムであり,2軸・2.5軸から5軸まで対応する。
図面データやスケッチ要素をCADで編集し、ダイレクトに2D加工を行う2軸加工。インポートデータに加工穴属性を定義することで穴加工を自動で行う自動穴加工。従来のサーフェス情報から加工パスを作成する3軸加工の他にSTLデータやサーフェスが混在するモデルにおいても同一の要素として加工パスを作成できる3軸クイックミル加工もあり、金型作成においては充実したCAM機能をラインナップする。
近年、金型製造にも注目されている5軸加工においては固定5軸加工をはじめ、マップ、スワーフ、曲線沿い、フロー、サイドカット、面沿いといった同時5軸加工にも対応している。
(注:試作品の機密保持の関係で掲載不詳の写真にはカタログベースの画像を使用しました。)
株式会社実践マシンウェア 営業部/『型技術』2006年11月号より抜粋